THINKING MEGANE

2020

今年は、なんと言っても、6月の初めてのジャーナル論文採録が文句なしに一番嬉しかった出来事だった。 ペパボ研究所に入って3年半。 本当に長かったし苦しかった。 それでもこの期間にたくさん自分自身や研究と向き合うことで、多くのものを得ることができたと思う。 今は、ただただ「巨人の肩に乗ることから逃げずに真摯に向き合い一歩づつ精進して」いる。

10月には、博士後期課程に挑戦し、無事に入学することができた。 12月のインターネットと運用技術シンポジウムではジャーナル論文の研究を発展させる手法が採録され、優秀プレゼンテーション賞も受賞することができた。 来年は国際会議に挑戦する。

長い暗中模索を抜けたが、スタートラインにやっと立てたとも言える。 遅れを取り戻すことを動機とはしないが、2021年は、可能な限り、適切な粒度で継続的に分野への貢献を出していきたい。 また、その貢献を通して周りの人へ直接的間接的に良い影響を与えたいと思う。

そのためにも、習慣と計画をうまく使い、仕組みによって淡々と自分を駆動していきたい。 2020年は1月末からリモートワークに完全移行したが、毎朝の論文読み会によって生活リズムが崩れることはなく研究に取り組めた。 毎日の業務後に進めるよう計画していた、大学基礎数学の参考書は、微分積分、線形代数、確率統計を一通りこなすことができた。 一方で、研究開発において、習慣と計画は適用が難しいと感じている。 研究には終わりがないため、どこまでの試行錯誤を区切りとするのか判断がつきにくい。 また、アイディアは無限にあるため、いろいろなことをやりたくなり、優先順位の判断がつきにくい。 つまり、全体をブレイクダウンしてルーティーンに落とし込むところに苦労している。 ここに関しては、研究日誌のような短期のアウトプットに加えて、もう少しだけ長い視点での判断をする機会を計画や習慣として組み込んでいきたい。 まずは、その観点でも指導教官や研究所のみんなにも相手になってもらおう。

2020年は光が見えた年だった。 2021年からは、この成果を普段から出せるよう、そして一つ上を目指せるようにしていこうと思う。 そして、その成果から行動の意義が伝わるような良い影響を与えられるようになりたいと思う。 来年もよろしくお願いします。

実績

以下、実績を列挙する。

表彰

2020年は2回の表彰があった。 コミュニティ活動と研究活動の両面で表彰をいただくことができて、非常に嬉しい。

論文

国内ジャーナル論文1本、査読付き論文1本。研究報告については第一著者のものが1本。 また、今年は研究報告のラストオーサーを2本務めた。

  1. 三宅 悠介, 峯 恒憲, Synapse: 文脈に応じて継続的に推薦手法の選択を最適化する推薦システム, 電子情報通信学会論文誌D, Vol.J103-D, No.11, pp.764-775, Nov 2020.
  2. 三宅 悠介, 栗林 健太郎, 変化検出と要約データ構造を用いた利用者の嗜好の変化に迅速に追従する多腕バンディット手法, インターネットと運用技術シンポジウム論文集, 2020, pp.1-8, Nov 2020. [発表資料]
  3. 三宅 悠介, 栗林 健太郎, 非定常な多腕バンディット問題における変化検出アプローチの線形モデルへの拡張, 研究報告インターネットと運用技術(IOT), Vol.2020-IOT-50, pp.1-8, July 2020.[論文] [発表資料]

国内発表

技術イベント、研究会での発表で計6回(学会の研究会、シンポジウムを除く)。 Fukuoka.go、WSA研究会といったお馴染みのところに加え、GMOのテックカンファレンス、エンジニアフレンドリーシティ福岡のような声をかけていただいた登壇もあり、バランスは良かったと思う。 来年は、国際カンファレンス登壇が最初の目標だが、国内でも参加したことがない技術カンファレンスや勉強会なども挑戦してみたい。

  1. 三宅 悠介 嗜好伝達コミュニケーションの効率化を目指した伝達方式の検討, Web System Architecture 研究会 (WSA研) #7, 2020年11月.
  2. 三宅 悠介 なめらかなシステムの実現に向けて, GMO Developers Day 2020, 2020年7月. [動画]
  3. 三宅 悠介 Go言語でシミュレーション用のシンプルなフレームワークStageをつくった, Fukuoka.go#16(オンライン開催), 2020年7月.
  4. 三宅 悠介 軽量なインデックス機構を用いた全文検索ツールの高速化の検討, Web System Architecture 研究会 (WSA研) #6, 2020年4月.
  5. 三宅 悠介 Adaptiveなウィンドウを求めて 〜サーベイと実装 Go言語編〜, Fukuoka.go#15 + 鹿児島Gophers(オンライン開催), 2020年3月.
  6. 三宅 悠介, 田中 孝明, 白石 憲正, 浜崎 陽一郎, 松口 健司 トークセッション / エンジニアと企業が描く未来のかたち, エンジニアフレンドリーシティ福岡フェスティバル, 2020年2月.

OSS

変化検出の手法をはじめ、シミュレーションのフレームワークなど研究開発で取り組む分野の実装が増えてきた。

  • ADWIN-V: ADWIN-V is an adaptive windowing algorithm for vector data.
  • stage: Simple and flexible simulation framework for Go.
  • sifter: A lightweight index for full text search tools using bloom filter.
  • adwin: Adwin is an adaptive windowing algorithm.
  • exponential-histograms: Exponential histograms is a data structure for sliding windows.
  • random_multivariate_normal: Random number generator from a multivariate normal distribution.

コミュニティ活動

昨年度の活動や昨今の状況でのオンラインでの活動が評価され、表彰やインタビューを受ける機会をいただき非常にありがたいことであった。 一方で、Fukuoka.go自体の活動実績は2回と例年に比べかなり少なめであった。 オンライン開催での主催者側のモチベーションをどう維持するかも課題である。

ブログ

13本。結果だけでなく、どうしてその考えに至ったかなど、その経緯、考えをまとめるカタチの文章をいくつか出すことができた。特に論文執筆のエントリのような自分なりのまとめは定期的に書いていきたいと思う。

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